工事現場や港湾で資材を吊り上げて運ぶ移動式クレーン。吊り上げ荷重5トン以上の移動式クレーンを操作するには、都道府県労働局長が指定する試験機関の学科・実技試験に合格して交付される「移動式クレーン運転士免許」が必要だ。公益財団法人安全衛生技術試験協会(以下、協会)が全国の安全衛生技術センターで実施している。
受験資格は不要、本人確認書類だけ
免許試験そのものに学歴・実務経験の受験資格は無く、誰でも受験できる。ただし申込時には本人確認証明書の添付が必須だ。未経験からいきなり免許取得を目指すことも制度上は可能だが、実際に操作する現場では別途、事業者が行う特別教育や実技講習を修了していることが前提になる。
学科試験と実技試験、2段階の構成
| 区分 |
内容 |
| 学科試験 |
移動式クレーンに関する知識(10問30点)・原動機及び電気に関する知識(10問30点)・関係法令(10問20点)・力学に関する知識(10問20点)の4科目。試験時間2時間30分(科目免除者2時間) |
| 実技試験 |
移動式クレーンの運転・運転のための合図。学科試験合格者だけが受験でき、学科合格から1年以内なら後日受験できる |
合格基準は学科が「各科目の得点40%以上かつ合計60%以上」、実技が「減点の合計40点以下」。学科と実技を同時に受ける必要は無く、学科に合格しておけば1年間のうちに落ち着いて実技対策ができる仕組みだ。
受験料
| 区分 |
金額(税込) |
| 学科試験 |
8,800円 |
| 実技試験 |
14,000円 |
協会の手数料ページには「試験手数料は消費税法により全て非課税で、インボイス適格請求書発行事業者の登録が無いためインボイスの発行はできない」と明記されている。振込ではなく領収書扱いになる点は経費精算の際に注意したい。
試験日程はセンターで異なる——全国一律ではない
協会の日程表(2026年9月確認)によれば、令和8年4月〜令和9年3月の実施日は次のとおりで、センターによって開催日が異なる。
- 北海道・東北・関東(市原)・中部・中国四国・九州の各センター: 5月21日・7月3日・9月2日・11月4日・翌1月15日・3月11日
- 近畿センター(本体): 5月21日・11月4日・翌1月15日
- 近畿センター(大阪試験場): 7月3日・9月2日・翌3月11日
- 関東センター(東京試験場): 実施なし
本記事確認時点(2026年9月19日)の直近回は2026年11月4日(多くのセンターで実施)で、受付期間は2026年9月4日〜10月21日。受付期間はオンライン申請で「試験日の2か月前から14日前まで」という協会共通の運用に基づく。関東の受験者は市原会場のみで実施され、東京試験場では実施されない点に注意。
実際に合格した人の声
移動式クレーン運転士取得を記録したブログ「ikigaiblog」の著者は、参考書(山本誠一著『よくわかる!移動式クレーン運転士試験』)と協会が公開する過去問題を使い、通勤時間を利用して学習したという。「未経験で受験しましたが、1回で学科・実技ともに合格」したとのことで、対策のコツとして「苦手な科目があっても、最低4問正解すればOK。その分を得意な科目で取り返しましょう」と、科目ごとの40%基準を逆手に取った戦略を紹介している。資格情報サイトを横断すると、安全衛生技術センターでの平均合格率は4割弱で「比較的難しい試験」と評価されることが多く、過去問中心の対策でも4科目の得点バランスを崩さないことが合格の分かれ目になりそうだ。
クレーン免許の全体像の中での位置づけ
クレーンに関する国家資格は複数あり、操作するクレーンの種類・大きさによって必要な資格が変わる。移動式クレーン運転士は「移動式(トラッククレーン等)」の5トン以上を対象とする免許で、天井クレーンなど固定式の大型クレーンを扱う「クレーン・デリック運転士」とは別の資格になる。取得を検討する際は、自分が扱いたいクレーンの種類をまず確認する必要がある。
ボイラー整備士・エックス線作業主任者との関係
いずれも同じ安全衛生技術試験協会が実施する免許試験だが、対象業務は全く異なる。ボイラー整備士はボイラー・圧力容器の整備、エックス線作業主任者は放射線業務の管理が対象で、いずれも現場の安全管理を担う専門免許という共通点はあるが、免許を取得しても他の業務を兼任できるわけではない。
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