固定式クレーンやデリックを運転する仕事を考えるとき、最初に分けたいのは「どの機械を扱うか」と「どの試験区分を受けるか」だ。クレーン・デリック運転士(限定なし)は、つり上げ荷重5トン以上の天井クレーン、橋形クレーン、ジブクレーンなどに加え、デリックも対象にする免許。車両に載った移動式クレーンとは別の試験区分である。協会の資格紹介は、限定なしなら全てのクレーンとデリックを運転できると説明している。
扱う機械と「限定」の組み合わせ
限定区分は試験科目にも反映される。既に限定免許を持つ人が範囲を広げる「限定解除」は、初回受験とは必要科目が異なるため、申請時に自分の免許名と受験区分を照合したい。
| 試験区分 |
対象機械 |
主な受験範囲 |
| 限定なし |
クレーンとデリック |
クレーン・デリック知識、関係法令、原動機・電気、力学の学科。実技はクレーン運転と合図 |
| クレーン限定 |
クレーン。デリックを除く |
学科からデリック知識・法令を除く。クレーン運転と合図の実技 |
| 床上運転式クレーン限定 |
床上運転式クレーン |
学科からデリック知識・法令を除く。床上運転式クレーンによる運転と合図の実技 |
| クレーン限定解除 |
クレーン限定から、デリックを含む区分へ |
デリック知識・法令のみ。実技なし |
| 床上限定解除 |
床上限定から、限定なしへ |
デリック知識・法令とクレーン運転の実技。合図は免除 |
| デリック限定解除 |
旧デリック免許から、限定なしへ |
クレーン知識・法令、原動機・電気、クレーン運転。力学と合図は免除 |
表は区分の違いをつかむための要約で、免除を受けるには対象免許や実技教習などの条件と証明書類がある。免除科目がある場合も、協会の各区分ページにある受験資格・申請欄で確認する。
学科と実技は別の関門
限定なしの学科は4科目40問。クレーンとデリックの知識・法令に加えて、原動機や電気、運転に必要な力学を問う。協会の合格基準は、学科が各科目40%以上かつ総得点60%以上、実技が減点合計40点以下。学科と実技の両方が必要な人は、学科合格後に実技を受験する。免除条件に当たる場合は、受ける範囲が変わる。
試験手数料は学科8,800円、実技14,000円で、協会は手数料を非課税と案内している。学科を受ける段階では学科分だけを払い、実技の費用や日程は学科合格後に別途確認する。試験手数料一覧には、クレーン・デリック運転士の料金と免許試験共通の学科料金が掲載されている。
令和7年度の公式統計では、限定なし欄の学科は946人中632人で66.8%、実技は79人中32人で40.5%だった。この限定なし欄には限定解除も含まれる。学科と実技は受験者の段階が異なるため、二つの率を掛け合わせて個人の合格見込みとはしない。安全衛生技術試験協会の統計は区分別・段階別に人数を掲載している。
2026年10月回は会場と申込状況が分かれる
令和8年度の日程表では、2026年10月7日に北海道、東北、関東(市原)、中部、近畿、中国四国、九州の各センターで試験が設定されている。関東の東京試験場と近畿の大阪試験場には同日の掲載がない。限定なしの日程表は会場別の日付を示す。
10月7日回のオンライン・郵送受付は8月7日から9月23日までで、この記事の確認日である2026年9月27日には通常期間が終了している。センター窓口の持参申請は、休業日を除く試験日の2日前まで受け付ける案内があり、10月7日回では10月5日(月)まで申請できる会場もある。ただし定員到達で早期終了する会場がある。2026年9月25日付の公式状況表では、近畿センター(加古川)は限定なしが満員、関東(市原)は郵送締切・窓口受付中、東北は受付中だった。北海道・中部・中国四国・九州の各ページでは、クレーン試験の定員懸念は表示されていない。これは9月25日時点の記録で、受付状況は変わりうるため、申請時は希望会場の表を確認する。例として、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国四国、九州にそれぞれ申込状況ページがある。
一人の受験記から見る、科目の切り分け方
2022年の個人受験記では、著者が限定なしの学科を受けた際、移動式クレーンの学習と共通する部分がある一方、原動機・電気の範囲は別に学ぶ必要があったと振り返っている。受験者の記録は一人の当時の経験で、現在の試験要件や標準学習時間を示すものではない。それでも「クレーン」という呼び名だけで既有知識をそのまま当てはめず、受ける区分の科目表に戻る視点は役立つ。
運転資格と事業場全体の安全管理は別の役割だ。労働安全の診断・指導を担う資格を調べるなら、労働安全コンサルタントも比較できる。
確認した資料
確認日:2026年9月27日。区分ごとの機械範囲・科目・免除条件は安全衛生技術試験協会の各紹介ページ、日程は令和8年度日程表、料金と合格率は同協会の手数料・統計ページで確認した。申込状況は9月25日現在と明記されたセンター表を参照し、個人受験記は2022年の一例として扱った。