揚貨装置運転士とは
揚貨装置運転士は、船に取り付けられたクレーンやデリックを使い、船と陸のあいだで貨物を積み替える仕事に関わる免許だ。公益財団法人安全衛生技術試験協会は、制限荷重(つり上げ荷重)が5トン以上の揚貨装置を運転するために必要な資格として案内している。港の岸壁に立つクレーン全般の免許というより、船舶に設置された揚貨装置を扱う免許と捉えると、名称から想像するより役割がはっきりする。 安全衛生技術試験協会「揚貨装置運転士の紹介」
「揚貨」は貨物を船へ積み込むこと、「装置」は荷を吊って動かす設備を指す。実際の作業では、陸から船へ、または船から陸へ荷物を移す場面で使われる。港湾荷役に関心がある人や、船の荷役設備を扱う仕事に就きたい人にとって、対象設備と資格の範囲を知る入口になる。
クレーン・デリック運転士との違い
名前が似ていて混同されやすいのが、クレーン・デリック運転士だ。こちらは天井クレーン、橋形クレーン、ジブクレーンなどの各種クレーンとデリックを運転する免許で、工場・倉庫・建設現場などの設備が例に挙げられている。一方、揚貨装置運転士は船舶に設置された設備で、船と陸との貨物の積み替えに使う。どちらも荷を吊る機械を扱うが、機械の設置場所と使われる作業が異なるため、資格名を入れ替えて扱うものではない。 安全衛生技術試験協会「クレーン・デリック運転士(限定なし)の紹介」
同協会の紹介ページでは、クレーン・デリック運転士(限定なし)も、揚貨装置運転士も、それぞれ5トン以上の対象設備を運転する資格として説明されている。重さだけで判断せず、設備が船舶に取り付けられているのか、工場などに設置されたクレーンなのかを確認することが大切だ。設備の分類や必要な免許は実際の機械・作業条件に関わるので、具体的な業務では事業者や関係機関の案内を確認したい。
受験資格と試験内容
公式案内では揚貨装置運転士試験の受験資格は不要とされ、受験時には本人確認書類が必要だ。ただし、合格後に別途免許申請をしなければ免許証は交付されず、満18歳未満には交付されない。18歳未満の受験者は、試験の受験条件と免許証の交付条件を分けて確認したい。揚貨装置運転士の受験資格・合格後の免許申請手続き
学科試験に合格してから続けて実技を受ける方法のほか、学科試験が全科目免除される人は実技を受験できる。安全衛生技術試験協会「揚貨装置運転士の紹介」
学科は4科目で、揚貨装置の知識が10問・30点、関係法令が10問・20点、原動機および電気の知識が10問・20点、運転に必要な力学が10問・30点。通常の試験時間は13時30分から16時までの2時間30分で、2科目免除の場合は13時30分から14時45分までの1時間15分だ。実技は「揚貨装置の運転」と「運転のための合図」。午前・午後のどちらになるかは受験票に記載される。
クレーン・デリック運転士(クレーン限定や床上運転式クレーン限定を含む)、旧クレーン・旧デリック、移動式クレーン運転士の免許を持つ人には、学科の原動機・電気と力学、実技の合図に免除がある。揚貨装置運転実技教習を修了して1年以内なら実技全部が免除され、学科合格から1年以内なら学科全部が免除される。床上操作式クレーン、小型移動式クレーン、玉掛けの技能講習修了者にも、実技の合図に関する免除規定がある。免除条件や提出書類は、申し込む時点で公式ページの一覧を確認しよう。 免除科目の一覧
受験料と申込方法
安全衛生技術試験協会が掲載する試験手数料は、学科8,800円、実技14,000円。学科と実技の両方を受ける場合、申込み時に支払うのは学科試験分で、実技試験の手数料は学科合格後に案内される。手数料ページの注記は「令和5年6月1日現在」で、試験手数料は非課税とされている。受験票が発行された後は返金できないため、申請前に最新の手数料と手続を確認したい。 安全衛生技術試験協会「試験手数料」
申請はオンラインまたは書面で行う。オンライン申請は試験日の2か月前から受け付け、締切は試験日の14日前。書面の場合は郵送と窓口持参で締切が異なる。いずれも定員に達すると期間内でも受付終了になる。なお、学科試験と実技試験を別々に受ける場合、学科試験の合格から実技免除の扱いを受けられる期間は1年間。日程を立てるときは、受験票の発行や実技の受付条件も合わせて確認しよう。 安全衛生技術試験協会「揚貨装置運転士の紹介」
2026年度の日程と現在の受付状況
安全衛生技術試験協会が公表する2026年度(2026年4月〜2027年3月)の試験日程には、北海道・東北・関東市原・大阪・中国四国で10月1日、東北・関東市原・大阪・中国四国で4月10日、中部で6月19日、九州で4月10日が掲載されている。東京試験場と近畿センターは日程欄が「ー」だ。2026年10月11日現在、掲載されている試験日はすべて過ぎており、同年度内の後続日程は公式ページに見当たらない。したがって、現時点で「受付中の試験がある」とは案内できない。次回日程は、公式ページに新しい年度の案内が掲載されるのを待って確認したい。 安全衛生技術試験協会「揚貨装置運転士の日程」
実技のイメージをつかむ
2026年9月に公開された港湾荷役従事者の体験記事では、筆者は揚貨装置運転士を含むクレーン系3免許の取得経験を紹介し、現場にあった模型で仕組みを理解していたため、揚貨装置の実技を一度で通過したと振り返っている。これは一人の経験で、試験の難易度や練習時間を代表する数字ではない。ただ、学科の用語を覚えるだけでなく、荷を扱う設備がどのように動くかを理解することが実技のイメージづくりに役立った、という本人の感想は参考になる。 港湾荷役の「クレーン系資格」、取ってみてわかった順番の話
揚貨装置運転士は、船に取り付けられたクレーン・デリック設備で貨物を移す業務に結び付いた免許だ。受験資格に制限はない一方、学科と実技の両方があり、経験や免許によって科目免除が変わる。試験日程は会場ごとに異なり、2026年度の掲載日程はすでに終了している。今後受験する場合は、次年度の開催日、受付期間、免除条件を安全衛生技術試験協会の公式案内で確認してから準備を進めよう。
確認日:2026年10月11日