ビオトープ管理士

自然・環境更新 2026年9月17日
ビオトープ管理士
合格率 / Pass rate
1級約33%・2級約52%(令和7年度実績)。前年度(令和6年度)は1級約31%・2級約60%
勉強時間 / Study
2級は独学で1〜3ヶ月程度が目安(編集上の推定)。1級は記述・小論文・口述対策を含め実務経験を前提とした学習が必要
費用 / Fee
1級11,300円・2級7,200円(税込)。1級の再受験(口述不合格時の翌年度限定)は5,100円

なぜ今ビオトープ管理士が注目されているのか

生き物が戻ってくる空間をデザインする専門家を証明する資格——それがビオトープ管理士だ。「ビオトープ(biotope)」とは「生命の場所」を意味し、野生の動植物が自然に生息・生育できる環境のこと。公益財団法人日本生態系協会が1997年に創設したこの資格は、初回から令和6年度までの累計合格者数が約1万7千名にのぼる。

注目が高まっている直接の背景は、公共工事への「環境配慮要件」の強化にある。自治体や国交省の発注案件では、生物多様性に配慮した設計が求められるケースが増えており、この資格を持つ専門家の需要が着実に高まっている。日本生態系協会自身も、この資格を「30by30」(2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する国際目標)の達成に向けて有用な資格と位置づけている。

資格は「計画部門」(都市計画・農村計画などの広域プランナー向け)と「施工部門」(現場の設計・施工担当向け)の2部門があり、さらに1級・2級の2階級に区分される。筆記試験は年1回、全種類のうち1つを選んで同日一斉に実施され、1回に複数の級・部門を受験することはできない。

受験資格——2級は誰でも、1級は7区分のいずれか

2級には受験資格が無く、学歴・職歴を問わず誰でも受験できる。

一方、1級は次の①〜⑦のいずれか1つを満たす必要がある(2026年9月確認・令和8年度受験の手引き)。

区分 要件(通算の実務経験年数)
① 四年制大学卒業後、7年以上
② 大学院卒業後、5年以上
③ 短期大学・専門学校・高等専門学校卒業後、9年以上
④ 高等学校卒業後、11年以上
⑤ 技術士(建設・農業・森林・水産・環境の5部門に限る)・1級土木施工管理技士・1級造園施工管理技士のいずれか取得後、4年以上
⑥ 2級ビオトープ管理士・2級土木施工管理技士・2級造園施工管理技士のいずれか取得後、7年以上
⑦ 上記の学歴・資格によらない場合、14年以上

「実務」とは地域計画の策定・設計・研究・指導監督、土木工事や造園工事の現場実務、野生生物調査や環境改善活動、教育機関での継続的指導などを指し、勤務先がその事業を扱っていても受験者本人が実務に携わっていなければ実務経験とは認められない。不正・不備が発覚した場合は遡って受験資格・合格・認証が取り消される。

試験内容——1級は択一+記述+小論文+口述、2級は択一+小論文

2級は筆記試験のみで、択一問題(通常受験50問=共通科目30問・専門科目20問)と小論文1問を午前の同一枠(10:00〜12:30)で解答する。

1級は「筆記試験」と「口述試験」の2段階だ。筆記は午前に択一問題(通常受験50問)、午後の同じ枠(14:00〜16:30)に記述問題4問と小論文1問を解答する。筆記合格者だけが翌年1月に別日程・別会場(東京都内)で口述試験(試験官との質疑応答・受験者1人あたり約15分)に進む。

区分 内容
択一問題(1級・2級とも) 共通科目(生態学・ビオトープ論・環境関連法)各10問+専門科目(計画部門または施工部門)20問。各科目正解60%以上が合格基準
記述問題(1級のみ) ビオトープ事業の現場に近い発展的な内容を4問、400字以内で解答。A〜Dの4段階評価で全問A・Bの評価が必要
小論文(1級・2級とも) 受験者の意志・信念を問う設問。1級800字以内・2級400字以内。可否の2段階評価
口述試験(1級のみ) 筆記合格者のみ対象。1級ビオトープ管理士に求められるレベルで適切・的確に答えられるかを審査

出題分野は生態学・ビオトープ論・環境関連法の共通科目に加え、計画部門なら都市計画・農村計画等の政策・計画・設計、施工部門なら河川・海岸・道路・農地等での生息空間の保護・復元・創出の設計施工が専門科目になる。野生生物の中でもトンボ類・両生類・里山植物は頻出分野として知られる。

なお、この資格に更新制度は無い。継続して自己研鑽したい合格者向けに「ビオトープ管理士継続教育」制度が別途用意されている。

受験料と2026年度(令和8年度)の日程

項目 内容
受験料 1級11,300円・2級7,200円(いずれも税込)
再受験(1級のみ) 口述試験で不合格だった場合の翌年度限定再受験、5,100円
受験申込受付期間 2026年6月1日〜9月14日(消印有効・本記事確認時点で受付終了)
筆記試験実施日 2026年11月1日(日)
口述試験実施日(1級のみ) 2027年1月16日(土)・東京都内
筆記試験合否発送 2026年12月24日(木)

筆記試験会場は北海道・岩手・宮城・新潟・石川・長野・東京・愛知・大阪・徳島・広島・福岡・鹿児島・沖縄など全国各地に設置され、詳細は10月上旬に発送される受験票で案内される。申請により学生向けの「キャンパス受験」や自主運営の「サテライト会場」も利用できる。

2026年度の申込は本記事確認時点(2026年9月)ですでに終了している。 次回受験を検討する場合は、日本生態系協会の公式発表で令和9年度の日程を確認する必要がある。

合格率の実態

日本生態系協会が公表する直近の実績は次のとおり。

年度 1級合格率 2級合格率
令和6年度 約31% 約60%
令和7年度 約33% 約52%

2級は「誰でも受けられる」資格でありながら、実受験者の半数前後が不合格になる水準だ。令和6年度には過去最年少記録として、愛媛県の小学6年生(受験当時11歳)が2級ビオトープ施工管理士に合格しており、年齢や経験に関わらず基礎知識を身につければ合格できることを示す事例として日本生態系協会自身が公表している。1級は実務経験者に限定した受験資格の上でなお合格率3割程度と、記述・小論文・口述まで含めた総合力が問われる設計だ。

学習の進め方

2級の学習ステップの目安は次のとおり(編集上の目安であり公式発表ではない)。

フェーズ 期間目安 やること
基礎インプット 1〜2ヶ月 公式テキストで生態学・環境法の全体像を把握
生物図鑑と並行学習 1〜2ヶ月 トンボ・両生類・里山植物を写真付きで覚える
過去問演習 2〜4週間 過去問を繰り返し解いて苦手分野を潰す

1級は記述問題と小論文に加え口述試験もあり、「自分が関わった事例を具体的に説明する」力が問われるため、実務経験の裏付けなしでは通過が難しい。

教材・講座ガイド

教材 おすすめポイント
「ビオトープ管理士資格試験公式テキスト」(日本生態系協会) 試験範囲を網羅した唯一の公式テキスト。まず最初に入手する
「日本の野生植物」(平凡社) 植物の同定・生態の詳細な解説書。植物名の正確な記憶に有効
「日本のトンボ」(ネイチャーガイドシリーズ・文一総合出版) トンボ類は頻出。生態と識別ポイントを写真付きで学べる
「生態学入門」(日本生態学会編) 生態系の基礎理論を体系的に整理したい人向け

日本生態系協会自身が対面式セミナー・オンラインセミナーを毎年実施しており、2026年度は6月27・28日に対面式セミナーが予定されていた。次回セミナーの日程は公式サイトで確認する。

取得後の世界

主な活躍フィールド

  • 造園・建設業: 環境配慮型の公共工事・開発案件の入札資格要件として評価される
  • 環境コンサルタント: 環境アセスメント・生態系調査の専門職として重宝される
  • 行政(市区町村の環境・緑地部局): 公共緑地の整備計画・生物多様性施策の実務担当として活用
  • NPO・教育機関: 里山保全や自然観察イベントの現場リーダーとして

日本生態系協会が示す受験者業種のトップ3は環境コンサルタント業・土木/建設/建築業・造園業で、近年はSDGs目標達成に向けた取り組みの広がりから、業種を問わない企業の企画室・広報室所属者の資格取得も増えているという。

関連資格とキャリアマップ

資格 位置づけ
環境計量士(国家資格) 環境測定の専門家資格。コンサルタント業界で組み合わせやすい
森林インストラクター 森林環境の保全・活用指導者。自然体験教育系に強い
eco検定 環境問題全般の基礎知識。ビオトープ管理士と知識が重なり相互補完できる
造園施工管理技士(国家資格) 公園・緑地の施工管理を担う上位国家資格。1級ビオトープ管理士の受験資格にもなる
生物分類技能検定 野生生物の同定能力を証明。現場調査に直結するスキル
ビオトープ生態系自然環境生物多様性造園