ITILを「知っている」人と「使える」人の間には、大きな壁がある。その壁を超えることを証明するのが**ITIL 4 Managing Professional(MP)**だ。
ITIL 4 Foundationが「ITILとは何か」を理解するための入門資格であるのに対し、MPはITILのフレームワークを現場で実装・活用するための「実践者資格」に位置する。PeopleCert(旧AXELOS)が管理するITIL 4の認定体系において、最もよく知られる上位資格だ。IT部門のマネージャー・ITコンサルタント・SIerの上位職が保有することで、「ITサービスの設計〜デリバリー〜継続的改善を実践できる人材」として評価される。
ITIL 4 Managing Professionalの全体像を3分で掴む
MPはFoundationを土台に、5つの試験を通過して認定される複合資格だ。
| ITIL 4 認定体系 | 概要 |
|---|---|
| ITIL 4 Foundation | 入門。SVS・SVC・14プラクティスの基礎知識 |
| ITIL 4 Specialist(4モジュール) | 実践レベル。各専門領域の深化 |
| ITIL 4 Strategist | 上位リーダー向け。戦略的ITサービス管理 |
| Managing Professional(MP) | 上記3点(Foundation+4Specialist+Strategist)の取得で認定 |
| Master | MPを含む全認定取得後、実務での適用事例評価で認定 |
前提条件: ITIL 4 Foundationの合格が必須。各SpecialistモジュールはFoundation取得者のみ受験可能だ。
対象者:
- SIerでSLM(サービスレベル管理)やインシデント管理の仕組みを構築・改善している人
- ITコンサルタントとしてクライアントのIT組織設計に関わっている人
- 社内IT部門のITSMプロセス担当・ITSM責任者
- ITIL Foundationを取得済みで、さらに深く学びたい人
Step 1: 受験資格と申込の流れ
Foundationを取得済みであれば、4つのSpecialistモジュールとStrategistの取得順序は自由だ。5試験全てを取得するとMPが自動認定される。
取得推奨順序(学習効率を考えた場合):
- CDS(Create, Deliver and Support) — ITIL実務の基幹。Foundationの知識と最もつながりやすい
- DPI(Direct, Plan and Improve) — 継続的改善のフレームワーク
- DSV(Drive Stakeholder Value) — 顧客・利害関係者の視点
- HVIT(High Velocity IT) — DevOps・アジャイル連携
- Strategist(DPI) — 上位資格。DPIの後に受けると学習内容が連続する
各試験の申込はPeopleCert認定テストセンターまたはオンライン監視試験で受けられる。日本では試験は一部英語のみのモジュールもある。
Step 2: 出題範囲と攻略の急所
Managing Professionalは以下の4つのSpecialistモジュール + 1つのStrategistモジュールの計5試験で構成される。
| モジュール | 略称 | 主な内容 |
|---|---|---|
| Create, Deliver and Support | CDS | ITサービスの設計・デリバリー・サポートの統合管理 |
| Drive Stakeholder Value | DSV | 顧客・ユーザー・利害関係者のエンゲージメントと価値共創 |
| High Velocity IT | HVIT | アジャイル・DevOps・クラウドを活用した高速ITデリバリー |
| Direct, Plan and Improve | DPI | ITサービス管理の方向性・計画・継続的改善 |
| Strategist: Direct, Plan and Improve | — | ITサービス戦略の方向性設定・組織全体のリーダーシップ |
各試験の形式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 形式 | 多肢選択式 |
| 問題数 | 40問(各Specialist)/ 40問(Strategist) |
| 試験時間 | 90分 |
| 合格基準 | 70%以上(28問以上正解) |
| 言語 | 英語(一部日本語対応) |
Foundation(65%・26問)より合格基準が高く、問題も応用力を問う形式になっている。「ITILを知っている」だけでなく「実務でどう使うか」まで考えないと問題文の意図を読み解きにくい。
Step 3: 試験当日の注意点と合格後の手続き
各試験は独立して受けられる。Specialist試験を1つずつ計画的に進め、全5試験の合格証を揃えるとMPが認定される。
試験当日のポイント:Foundationと異なり、シナリオや実務文脈から「最適なITIL 4の観点」を選ぶ問題が増える。概念の定義を覚えるだけでなく、「この状況ではどのプラクティスのどのフェーズを適用するか」という思考が必要だ。
合格後は、The Open GroupのサイトでMP認定のデジタルバッジが取得できる。
上位資格:
- ITIL 4 Master — MPを含む全認定取得後、実務での適用事例評価で認定。ITIL認定の最高位
合格者が語るリアルな難易度
公式の合格率は公開されていないが、各モジュールで60〜70%程度と推定されている。
| 比較資格 | 難易度 | 特徴 |
|---|---|---|
| ITIL 4 Foundation | ★★★☆☆ | 基礎概念の理解。独学可能 |
| ITIL 4 Specialist(各) | ★★★★☆ | 応用問題。実務との対応理解が必要 |
| CISSP | ★★★★★ | セキュリティの最高峰。実務経験必須 |
| PMP | ★★★★☆ | プロジェクト管理の国際資格 |
学習方法と費用感:
| 方法 | 費用 | 効果 |
|---|---|---|
| 公認トレーニング(各モジュール) | 80,000〜150,000円 | 高い。試験付きコースが一般的 |
| 公式ガイドブック(英語) | 各5,000〜8,000円 | 独学の基本テキスト |
| 模擬試験問題集 | 各3,000〜5,000円 | 試験直前対策 |
5試験全てを公認トレーニングで受けると費用は50〜75万円に達する。会社の研修費用として申請するか、個人では費用対効果を考えて独学を組み合わせるのが現実的だ。
ITIL MPは、IT部門のディレクター・ITサービスマネージャー・CIOへのキャリアパスで評価される。特に欧米系の外資IT企業・コンサルティングファームでは上位管理職の選考基準に入ることがあり、PMP・AWS/Azureクラウド資格・CISSPとの組み合わせで「ITサービスを設計から運用まで一貫して扱える」プロフェッショナルとして差別化できる。
参考文献・出典
- AXELOS「ITIL 4 Managing Professional」 — ITIL フレームワーク提唱元による Managing Professional の構成・モジュール解説の一次情報源
- PeopleCert(ITIL 試験運営機関) — 受験申込・試験形式・合格基準・再受験ルールの公式情報源
- 情報処理推進機構(IPA) — 国内 IT サービスマネジメント領域における ITSS(IT スキル標準)との対応・人材育成データの参照元
